『勧誘されちゃった』
高校時代の同級生K子から電話がかかってきました。
彼女はおとなしい性格で特に目立つことはなかった普通の女の子。
電話をかけてくるときは
だいたい泣いているか怒っているときで、
会社の愚痴を2時間くらい聞かされ、受話器を置く頃には耳が痛い、という調子でした。
あ〜。またそんな電話かな、って思ったら
「りーくちゃんっひさしぶりー!!」
なんだこの彼女らしからぬテンションは。
どうやら彼女、あるサークルに入ったそうです。
そこで友達がたくさんできて充実した毎日を送っているので、
いろいろ相談に乗ってくれたあたしも是非!と思ったそうな。
サークルってうさんくさくない?と思ったのですが、
見学も兼ねて久しぶりに会おうよ〜というK子の言葉に
重い腰をあげました。
何年かぶりに会うK子は怖いくらい元気。
まるで初めからそこに連れていくことだけが目的かのように
会話もそこそこに連れこまれる怪しいビルの怪しい部屋。
部屋の中には、20代くらいの男女が50人ほどいて、K子を見つけると、素早く寄ってきます。
「K子ちゃんひさしぶり!あ、そっちの子はお友達ぃ?」
そしてK子があたしを紹介するわけですが・・・
なんかね。
変なの。
なんかみなさん・・・・
異常にフレンドリーなのよね。
気味悪いくらいハイテンション&輝く笑顔の5〜6人の男女があたしを完全包囲。
「怖がらなくていいよ〜」
「ここなら友達いっぱいできるよお〜」
「あ、はい、は、はあ・・・」
圧倒されていくあたし。
この時点でK子どこかに消えてます。おい!置いてくなよ!
部屋を見回すと、教卓があって、座席があって・・・・「教室」っぽい。
ただ、座席の前に、なぜか特別席があります。
にこやかなお姉さん方が言うには、
特別席にはその日初めて来た人が座るって・・・・
ああ、あたしの事ですね。
場内がざわざわしはじめ、別の部屋からスーツを着た30代くらいの
幹部らしき方がぞろぞろ出てきて 説明会が始まりました。
サークルなのに幹部とは。
とりあえず逃げれないので話しを聞いてみることにします。
・・・内容は↓です。
まず最初に大量の高額商品を購入してもらいます。
その商品を飛び込み営業で売るためにはやはり商品知識が必要不可欠なのでそのために高額の教材を
買って勉強してください。商品を売れば売っただけそのマージンはあなたの上のランクの人に流れていきま
す。だから最初はまネズミ講ったらネズミ講。金が入りません。でも
大丈夫あきらめないでください。商品を
売れば売るだけあなたのランクももあがっていくんです。つまりどうい
うことか?ランクがあがればあがるだけ、あなたの下のランクからのマージンが入るということです。幹部クラ
スまで行くとなんとマージンだけで生活ができてしまうんですよ。今ここにいる幹部の方達も一生懸命勉強し
てランクをあげて今では高級マンションに住んで高級車に乗っているのです。さああなたも高額商品を仕入れ
て高額教材で勉強して夢とお金を手に入れてください。
説明会が終わってぐったりしていると
先ほどの幹部が特別席に座るあたしたちのもとへとやってきました。
1人に1人、幹部がついて勧誘たーいむ♪
「ね?とりあえず入って勉強してみようよ。みんなもあんなに楽しそうでしょ」
「うまくいけばこの収入だけで生活できるんだよ〜。 」
「どんな勉強かは、教材買わないと教えられないんだけどね」
「今説明しても難しくて理解できないから。 入会してから、少しずつ教えていくから」
「来週旅行あるから行こう」
<旅行金7万。
この人達の言ってること全部おかしいヨー!
旅行に行ってしまったらもうこっちの世界に帰ってこれないような気がします。
旅行は行きません、ちょっと親にも相談したいので。と、逃げようとすると
「だめだめ、親に言ったら絶対反対されるよ」
親が絶対反対するようなサークルってのもどうなのよ。
とりあえずその場はなんとか脱出成功、
K子におかしいじゃないかと問いつめてみたものの、
あたしが求めてるような答えは出てきませんでした。なんか隠してるっぽいの。
しまいには、
「なにもかも、勉強すればわかるようになるの」
の、一点張り。
怖いよおおおおおおおヤバ系だよおおおおおお。
しかもK子入会したばっかりなのにかなり高いランクだった。
K子を通して入会を断ったら、自分で言いに来いと文句言われましたが、
行ったら拉致られそうな雰囲気もあったので、やめておきました。
・・・・・・人は必ずそれぞれの道を進んでいくといいます。
同じ地域に暮らしていても、同じ学校を卒業していても、向かう道は違う。
・・・しかしこういう道に進んでしまうとは。
さようなら友情。K子、いい幹部になるんだよ。
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K子にサークルと称したネズミ講に勧誘されたお話。
これを書いたのはかなり前で、最近になってちょっと違う方向に考えるようになってきました。
なんとなく、K子がその世界にハマってしまった理由がわかるのです。
誰かを騙して金儲けをしようと思ったわけではないという事。
ただ、寂しかったんだという事。
家族との不仲、職場での上司によるいじめ・・・K子にはつらい過去があった。
あたしは彼女と電話で話していたけれど、頻繁に会えるわけでもなかったし
どれだけ彼女を支えられていたかはわからない。
家族でさえも頼れない、そんな中で見つけた、仲間と、仲間のいる場所。
それがネズミ講だと気付いていただろうか。
気付くことも出来なかっただろうか。
気付いていたとしても関係なかっただろう。
そこにいれば優しくしてくれる仲間がいた。
同じ目標をもって一緒に勉強できる仲間がいた。
あたしがあの場所で感じた違和感。
たくさんの人が話しかけて優しくしてくれたけど、それは「優しさ」?
あたしはK子を受け入れることができなかったという事実。
K子に本当の友達はできたのだろうか。
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